6.治療開始

早速初診の日から、インスリン注射が始まった…のだが…。

今振り返ってみると、ここから数か月に渡る治療において、どうにも疑問に思うことがある。

というのも、当時にしても今にしても、本来1型糖尿病となれば、即日か、もしくはなるべく早いうちに入院を勧められるはず。

それはまず、身体からほとんど出ていないインスリンを日々補うため、自ら注射でいち早く打てるようにならければいけないから。

そして食事療法、運動療法など、病気と付き合いながら生活していく上で必要不可欠なことを教えて頂くため。


ところが実際は何故か初診から5日間、とりあえず毎朝病院へ通い続け、注射も看護師さんに打って頂いた記録がある。

もちろん学校へ行きながらなので、外来で自分で打てるように練習したような気もするのだが、もはやいつ自分で打てるようになったのか記憶にない。


当時の記録は、毎朝一回モノタード・ヒューマン。

HbA1cは12.6。高~い!

また初診の次の週からは、薬物療法に切り替わった。

そこは主治医のK先生にも「あなたは薬が効くようだから。」と言われた記憶がしっかりある。

記録を見るとそこから約1ヶ月半、確かに薬物療法(薬名は達筆過ぎ?て読めない^^;)とある。

そしてちょうど年が明けた頃から、ついに食事療法のみの治療が始まった。

あの日先生に、

「食事も運動もきっちりまじめにやってるから、どんどん良くなってるよ。すごいね、良かったね。」

というようなお褒めの言葉を満面の笑みで言われたこと、今でもはっきり覚えている。


さすがにあの時は本当に嬉しかった。

というのも、母に協力してもらいながらそれまでほとんどやったことのない料理を始めたり、夕食後、妹にも付き添ってもらいながら、家の前の緩い坂道を必死で走ったりと、それなりの努力をしたからこその結果だったからだ。


今思えば発病してからのその数か月間で、努力すればてっきり食事だけでコントロール出来るものだと思い込んでしまったような気がする。

1型(だった?)なのに、もはや治ったような気になって。

一生インスリンを打たなくても良くなったんだって。

運動して、もう一度膵臓を元気づけてインスリンの効きが良くなったら、元に戻れるんだって(後々それは、膵臓の残存しているβ細胞を疲弊させることになるので、インスリンを打って温存させる治療が良しとされるようになったらしい)。

そして、何事も努力すれば願いは叶うんだって。


さて、この大きな勘違いが、後々自らを大変な思い込みへと導くことになろうとは、もちろんこの時、知る由もなかった。

日日是好日

1987年から平成までの、1型糖尿病と共に過ごした日々を綴ります。 今日一日がたとえどんな日であっても、ベストを尽くせばすべて好し。 これからも、そんな気持ちで日々を過ごして行きたいな。 2019年4月4日~