11.演劇の効用~2~
スタッフの中で一番多く携わった「音響効果」を担当して、今まで知らなかった音楽にたくさん出会うことが出来た。
それまではほとんど世間で流行っているアイドルの曲、またはメジャーな日本や海外のポップスしか知らなかった。
なので周囲のサークル仲間から教えてもらった未知なる音楽たちは、まさに「文明開化の音がした!」という程の驚きがあった。
まずケイト・ブッシュというイギリスの女性アーティスト。
元々彼女は演劇をしていたこともあり、MVなどを見ると、まるでそのパフォーマンスがそのまま舞台から飛び出してきたようだった。
中でもイギリスの有名な小説『嵐が丘』を元にした同名曲が、ケイト自身の歌とパフォーマンスでここまで表現されるとは…!
今改めて見るとちょっと怖い。
初めて聴いたときは一瞬鳥肌が立ち、本当に驚いた。
次にコクトー・ツインズ。
まるで宇宙にこだましているかのようなサウンドと女性ボーカル。
また耳で聴きながらもその音たちは、まるで万華鏡の中を覗いているような視覚的なイメージも湧いてきて、そのフワフワした浮遊感に、一瞬にして虜になってしまった。
そしてブライアン・イーノ。
まるで海の底のような、または空の彼方を飛び出して宇宙で漂っているかのような音楽を初めて聴いたとき、身も心もそこに溶け入りそうな、そんな不思議な感覚を覚えた。
他にもロックやクラシックはもちろん、環境音楽やワールドミュージックなどなど、いろんなジャンルをまるで貪るように聴いた。
音楽の使い方次第で、お芝居の世界は全く違ったものになる。
なのでおもしろい作品をつくろうと、あの頃の音楽への探求心は、未だかつてなく強かった。
また、そこで知り得たいろんな音楽をお芝居の中の様々なシーンで試行錯誤しながら使って行く作業は、とても面白かった。
こうしてあの頃知ったいろいろな音楽は、その後自分がいろんな窮地に立ったとき、本当に私を救ってくれた。
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