13.二種類の孤独と成人式

思えば大学時代は、常に2つの感情を持ち合わせながら過ごしていたように思う。

この2つの感情というのは、孤独感と、友だちやサークル仲間たちとの連帯感。

これらの感情が両者共あまりにも強く両極端だったために、あの頃は自分の人生の中で一番濃密で混沌とした時期だったように思う。


1つの芝居を作るためにただひたすら、みんなが夢中になってエネルギーを注ぎ込む。

その過程は、みんなの輪の中で無心になっているだけに、いつも満たされ、楽しくて仕方なかった。


一方芝居を離れた場所、中でも飲みに行ったり食事をしたりする場面では、何か自分の周りに透明な幕が張られたような気持ちになっていた。

その幕は、その友だちや仲間たちとの繋がりが強ければ強いほど厚く感じられた。


手を伸ばせばみんな、すぐに触れることが出来る距離なのに。

友だちもサークルの仲間たちも、とても優しい人ばかりだったのに。

今思い返してもあんなに素敵な良い人たちばかりに囲まれていたのに、心の一番深いところでは、周囲に心を開くことが出来なかったのだ。


また、それは成人式の日のことだった。


あの日、友だちもサークルの仲間たちもそれぞれに、式や催しに参加していた。

けれど私は、ずっと一人で家に居た。

発病したのが19歳の秋だったこともあり、その数か月後の成人式にはとてもお祝いモードにはなれなかったからだ。

普段仲の良かった友だちとも、この時はさすがに距離を置いた。

恐らく一緒に居ても楽しい振りは出来ないし、自分の心の底の状態から目を背けることが出来なかったからだと思う。


この成人式の前後当時は、本当に孤独だった。

物理的に1人という個としての孤独と、みんなの輪の中で感じる孤独の2種類の孤独だ。


あの頃時代は、バブル全盛期。

恐らく多くのバブル世代の人たちがそうだと思うのだけれど、当時の華々しい音楽を聴くと、今でも自ずと身体がリズムを刻む。

けれど私はふとした瞬間に、意識がエアポケットに入ったような、そんな感覚に陥る時がある。


遠い昔の忘れ物は、今でもずっとあの頃に置いたままだ。

ただ今だからこそ思えるのは、あの当時、辛くても真正面から孤独と向き合ったこと、本当に良かったと思う。


当時の自分に贈りたい。

そして今、病や困難と向き合っているすべての人たちと分かち合いたい曲。

『ひとりぼっちのエール』

日日是好日

1987年から平成までの、1型糖尿病と共に過ごした日々を綴ります。 今日一日がたとえどんな日であっても、ベストを尽くせばすべて好し。 これからも、そんな気持ちで日々を過ごして行きたいな。 2019年4月4日~