17.妹の家出

初めての一人暮らしが数か月で終わってしまった後は、家に舞い戻り、今まで通り過ごすしかなかった。

ただ家に帰ると、今までと様子がガラリと変わっていた。


まず、弟が県外の大学へ進学することになり、家を出ていた。

次に私と入れ違いに、妹が家からいなくなっていた。

妹は市内の隣の区のマンションを、いつの間にか借りていた。

どうやら妹は高校へ通いながらも、家族や学校に内緒でアルバイトをしていたらしい。

妹の行動力には目を見張るところがあり、母からすればそんな彼女の行動は、あまりにも突飛で想定外過ぎたようだった。

なので母は、かなりショックを受けたようだった。

後から聞いた話、実は妹の家出は、私の発病よりもショックだったということだった。


幼い頃、家族の中では誰よりも優しく従順だった妹。

私が発病当初、運動療法のため、家の前の道路を走る時に一緒に走ってくれた妹。

我が妹ながらこんな家庭環境の中で、何故こんなにも心優しくなれるのか、というよりそう生まれついていたのか?と思うほどだった。


そんな彼女がいつの間にかアルバイトを始め、母も私も知らない人間関係を広げ、そこから家出先を見つけていたのだ。


ずっと長い間、私や弟のように感情を一切表には出さず、心の中にいろんな思いをため込んでいたのだろうか。


その後幸いにして妹の行き先は、母も私も知ることが出来たのでまだ良かった。

けれど母にとってはまだまだそれでも心配で、妹が出てしばらくは、かなり頻繁に妹のアパートを覗きに行っていた。


それから妹は約7年、一度も家に帰って来ることはなかった。

大好きないわさきちひろさんの絵。


日日是好日

1987年から平成までの、1型糖尿病と共に過ごした日々を綴ります。 今日一日がたとえどんな日であっても、ベストを尽くせばすべて好し。 これからも、そんな気持ちで日々を過ごして行きたいな。 2019年4月4日~