29.危険な症状

実は過食症状態がその時まだ続いていたのかいなかったのか、そこまで記憶にはないのだけれど、明け方、毎日のようにとても奇妙な症状が続いた時期があった。

毎朝起きたら口の中に、いつの間にか血豆のような、小さな血の塊が出来ているのだ。

時に布団のちょうど首のあたりにくる場所に、小さな血がついていたり。

一体これは何だろう?って、いつも思っていた。

そこのシーンだけ思い出すと、それはまるでプチホラー映画のよう。


ただそれは後々分かったことだったのだけれど、実はとても危険な状態を毎日繰り返していたのだった。

要は明け方に、かなりきつい低血糖症状を起こしていたのだ。


当時は血糖値を就寝前に測ったら、朝目覚めるまでその推移は全く分からない。

もしそれを確認しようとするとしたら、毎朝4時か5時頃、その都度起きて血糖値を測るしかなかった。


もともと1型糖尿病患者には暁現象と言って、早朝から起床時にかけて血糖値が上昇する現象が見られることがある。

それはインスリン拮抗ホルモンであるコルチゾールや成長ホルモンなどの分泌亢進により、インスリン作用が減少し、血糖値の上昇をきたすというもの(バイオキーワード集より)だ。

なので寝る前は正常値であっても、何故か明け方やけに高い数値が出るときは、その暁現象の可能性も考えなければならない。


ところが当時そんな現象があるとは全く知らず、と言うより恐らく2~3回は通ったかと思われる紹介された病院では、ただ明け方の血糖値のみで判断され、ひたすら上がる血糖値によりインスリンの量が増えて行った。

その結果恐らく、インスリンを増やせば増やすほど、明け方いったん一時的にものすごい低血糖になり、それで痙攣したのかどうか分からないけれど、口の中を切ったりしていたのだと思う。


普通そこまで酷い低血糖になったら、一度くらいそのまま意識を失っても全く不思議ではないのだけれど、私の場合、何故かそうなることはなかった。

その代わり、起き掛けにものすごい頭痛がしたり、先のような症状が出たのだ。


さすがにここまで来たら、当時紹介された病院へは行く気にはならず、遂に母に電話して相談した。

そこで次なる対策として、上京前の教育入院時、お世話になったI先生に連絡を取ることにした。

上京前に紹介された病院=神田にあったはずの幻の病院、名前も場所もすっかり記憶から抜け落ちて、一体どこにあったのやら。

神田の古本屋街の写真を見ると、いつも思う。

日日是好日

1987年から平成までの、1型糖尿病と共に過ごした日々を綴ります。 今日一日がたとえどんな日であっても、ベストを尽くせばすべて好し。 これからも、そんな気持ちで日々を過ごして行きたいな。 2019年4月4日~