45.重なる不安、そして決行
毎朝4時頃起きて血糖値を測るように言われた診察日から、それまで精一杯強く張り詰めていた糸が、すっかり切れてしまったのを感じていた。
何とかしたくてたまらないのに、依然変わらない現実にどんどん追い詰められて行った。
この明け方の低血糖のような症状を何としてでも防ぎたい、たとえその原因が何であろうと、とにかくまずはその症状を消したいという思いでいっぱいになった。
もはや明け方の意識があやふやな中、低血糖になること自体が怖くて仕方がなくなったのだ。
また新たな不安まで感じ始めていた。
それは起床時に上がった血糖値に伴い、その都度インスリンを増やすことになったとしたら、このまま延々とインスリン漬けになってしまうのではないかと。
そしていつかそのインスリンの量ですら効かなくなったら、一体自分はどうなってしまうのだろうと。
そこでいつかこの悪循環を、何としてでも断ち切らなければ…!と、どんどんそんな思いで頭がいっぱいになっていった。
ただそれを断ち切るとしたら、I先生には言わずに自分で勝手にインスリンの量を減らさなければならない。
(当時はインスリンの増減は、すべて医師の指示によるものだった。)
そうすることでI先生には多少なりとも罪悪感を感じるけれど、それでもここまで来たら、自分の身体を守れるのは自分しかいない、と、気づけばそういう思いにまで至っていた。
そして遂にある日、一日の基礎分泌を補う持続型インスリンを減らした。
最初はほんの少し、その後は自分の体感で、とにかく明け方の低血糖の不安を感じることなく熟睡出来るまで、減らしていった。
それからしばらくして、明け方の低血糖の恐怖からは抜け出すことが出来た。
でも一方で、診察に行くたびにI先生に嘘をついているという後ろめたさでいっぱいになり、同時に今後どうしたら良いのか、今まで以上に不安になった。
ただ、インスリンを減らしているのに当分のあいだ、数値もほとんど横ばいで、体重も減ることはなかった。
もちろん良くもならなかったので、指示されるインスリンの量は、その後もじわじわと増えて行った。
このように、かなり大きな悪循環の中で、1年近く鬱々としながら何とかIクリニックに通った。
が、遂にまたある診察日、もはや通えなくなってしまうような出来事が起こってしまった。
通うのに、バスとJRを乗り継ぎ片道1時間以上かかったIクリニックへは、行き来するだけでもしんどかった。
やはり病院は、出来るだけ近い方が良い!と思ったのもこの頃。
今はもうこの駅から、どの道を通って病院へ行ったのか、すっかり忘れてしまった。
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